HOME >> 安寿の知恵 >> サプリメントの上手な摂り方

サプリメントの上手な摂りかた ヘビースモーカーの方必読 安全性からみた合成と天然

『安全性からみた合成と天然』

◇ 脂溶性ビタミンと過剰症

前回では、おもにビタミンB群の栄養素のサプリメントについて、合成と天然由来のものについて比較をしました。

ビタミンB1などBグループのビタミンは水溶性であるため過剰症までの許容範囲が広く、合成でも天然でも例え一瓶分を一度に飲んだとしても、下痢をするくらいで済むでしょう。

過剰症が出るビタミンは、脂溶性のA、D、Kなどです。脂溶性ビタミンにより過剰症が現れる理由は、水に溶けて流されることがなく肝臓など組織に蓄積されていくからです。

ビタミンEも脂溶性ですが、Eは一定の箇所に留まらず、細胞膜の酸化を防ぐと いう仕事を果たした後、すんなり排出されます。Eは血管を拡張する作用があり、狭心症の患者が大量にとると心拍数が高くなる可能性がありますが、控えめな量では問題ありません。

過剰症が怖いのはビタミンAだといわれています。いずれ個々のビタミンについて詳しく触れますが、それでもビタミンA過剰症が生じた例は、次の二点に限られるのです。
)慢性中毒  合成ビタミンAを一日に10万IU以上の量、数ヶ月以上摂り続けたときに、肝臓が腫れたり、手足の骨が痛み始める。
2)急性中毒  ビタミンAが多量に含まれる魚の肝臓を食べ過ぎたときに起こる。通常ビタミンAは体中の粘液と目に運ばれるが、余剰のビタミンAが必要とされていない組織に運ばれてしまい、その結果脳圧を高くし、頭痛や吐き気などの症状を引き起こす。

いずれのケースも死につながったり、永久的になることはありません。ビタミンA の摂取をやめると速やかに回復します。

◇ 肝油にはビタミンAとDが多い

ビタミンDには、カルシウムの吸収を高くする働きがあります。過剰に摂りすぎると、カルシウムの吸収を促進する結果、マグネシウムの欠乏が生じたり、血管壁や肺、腎臓などにカルシウムが沈着し、動脈硬化や結石の引き金になるかも知れません。

ビタミンDの必要量は100IUです。Dは魚に多く含まれ、魚を適量食べていると不足することはありません。また紫外線が皮膚でビタミンDを合成することができます。

牛乳に添加されていることがある合成ビタミンDを一日2万IU以上摂り続けていると、過剰症が引き起こされます。それだけの量をとることは不可能に近いのですが、マグネシウムが十分にとられているとカルシウムの沈着が防がれ、Dによる過剰症が予防されます。

肝油はビタミンAとDに富み、子供の栄養補助のため給食につけられていました。 肝油を一日に一、ニ粒飲んでいると、粘膜を強くして感染症を防いだり、目の健康を護る効果が期待できます。しかしながら、30粒以上飲み続けるとAとDの両方の過剰症が出るおそれがあります。何事もバランスと適正量を考えてとりたいものです。

◇ ベータカロチンに二つの説

ベータカロチンはビタミンAの分子二つが結合したもので、油に溶けて体内に入り、必要に応じてビタミンAに変換されます。

ベータカロチンはにんじんやほうれん草などの緑黄食野菜に黄色や赤の色をつける色素です。この色素に強い抗酸化作用がああり、植物はカロチンを作ることで自らが紫外線の害を受けるのを防いでいるのです。

ベータカロチンは無害であることが定説です。唯一の過剰症はカロチン血症といい、手のひらなどがカロチン色素により黄色くなることです。しかしながら、痛くも苦しくもさせず、にんじんを相当量食べたところでこの症状が出ることはほとんど稀です。

ベータカロチンが重要なのは、ビタミンAに変換されるという働き以外に、紫外線やタバコの煙、大気汚染によって発生するフリーラジカルの害を減らし、ガンを予防する働きがあることです。

世界で最も有力な医学雑誌「ランセット」の大規模な調査により、緑黄食野菜をよく食べてベータカロチンをとっている人は、たとえ喫煙の習慣があったとしても肺ガンになる確率が低くなることが明かにされました。

また中国のガン多発地帯のリンシャンで、国際ガン研究所が住民に何年かの間、ベータカロチン、ビタミンC、Eなどのサプリメントを投与し、食道ガンなどのガンによる死亡率を大幅に下げることができました。

しかし、近年の1994年に、ベータカロチンの過剰摂取が反対に肺ガンの進行を促進するのではないかということが報告され、波紋を投げかけることとなりました。

この結果はイギリスのロイター通信社にスクープされ、当時のことながら「ベータ カロチン神話」に大きな揺さぶりをかけることになりました。サプリメント王国のアメリカで肺ガンの予防にベータカロチンをとっていた人は多数だったと思いますが、大きなショックを受けたことでしょう。

◇ フィンランド・スタディは合成カロチンを使用

しかしながら、この結果について、ベータカロチンが肺ガンを促進するというメカニズムについては不明のままです。

この実験の結果に対して、いくつかの疑問視された声があります。ガンは10年から 15年という長い年月をかけて生じるものであり、対象者になった高齢者はヘビースモーカーであり、ベータカロチン投与前からすでにガンになっていた可能性があります。

しかし、仮にガンになっていたとしても、栄養素の供給によりその進行を大幅に遅らせることができます。それができなかったということは、投与されたベータカロチンの効果が低かったのかも知れません。

最も大きな問題点は、フィンランド・スタディに使用されたベータカロチンは合成のものであったことです。以前に実験で使用されていたのは、天然型ベータカロチンでした。

実際、野菜を食べ過ぎるほど食べている人が食物からかなりの量のベータカロチンをとっていたとしても、ガンになることはほとんど信じられない話です。

◇ 天然の成分は助け合って働く

天然型のサプリメントでは、ベータカロチンはにんじん油から抽出されます。ゼラ チンのカプセルには、赤い液状の油が入っています。

ベータカロチンが油の存在で吸収率がよくなることは常識です。天然型のベータカロチンは油に溶けているため、吸収率に優れています。

一方、合成型のベータカロチンが油に溶けていたとしてもそれが天然の油ではなく、エタノールのような油様物質であった可能性があります。この違いが、二つの疫学調査の結果に現れたのかも知れません。

また天然型サプリメントは、自然の食物からその栄養素だけを完全に分離したものではありません。アスコルビン酸(ビタミンC)もベータカロチンも一つの化合物ですが、それ単独で体内で働くかどうかは疑問です。

天然ビタミンEは、アルファ、ベータなど構造が微妙に違う8種類のトコフェロールが共同的に作用することにより有効に働きます。

カロチンも多種類あり、ベータカロチン以外にアルファカロチン、リコペン、ルテインなどがあります。ビタミンAとしての効力が強いのはベータカロチンですが、 他のカロチンも活性酸素の消去などガン予防に働くことが報告されています。

つまり、野菜や天然型のサプリメントから栄養素を摂取する場合、その働きを強化し、助ける成分も同時に含まれています。将来、吸収されやすい合成ビタミンやカロチンが開発されるかも知れませんが、今のところは効力という点において、にんじんやアルファルファなど野菜からとられた天然型のベータカロチンを選ぶ方がよさそうです。

またベータカロチン、ビタミンC、Eは同時にとられることでそれぞれが助け合 い、効果的に働きます。もしも大気汚染や喫煙、あるいは受動喫煙などの機会があり、肺ガンなどを予防したいなら、マルチビタミン&ミネラルを土台とし、その上でベータカロチンやビタミンCを足してとるといいでしょう。

「アメリカ・国際ガン研究所とヘルシンキ大学の共同調査」
●対象:フィンランドに住む55歳以上のヘビースモーカー約3万人
●投与:次の4グループに分けて投与を開始
1) 一日に錠剤のベータカロチン20mgとビタミンE50mg
2) ベータカロチン20mgだけ
3) ビタミンE50mgだけ
4) ブラセボ(偽薬、二重盲検法に用いられる)
●結果:1)の群に肺ガンが最も多く発生

(杏林予防医学研究所 予防医学ニュース104号より)