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細胞膜安定化の鍵はフラックスオイル(亜麻仁油)に多いα‐リノレン酸

anjuu staff 芦原 絵里香

細胞膜は単に境界を決めるだけでなく、細胞内外におけるホメオスタシスを保ちながら、積極的に外界との物質交換や情報交換をするという重要な仕組みをもっています。また植物の細胞壁とは違って活発に伸縮して変化することも可能で、白血球などはアメーバ運動にも対応できます。このようにやわらかく、そして薄い構造は緻密な2重膜からなり、内側と外側の表面に全体としてマイナスの電荷を持つため、中性分子や高分子、マイナス電荷をもつイオンなどは通しにくいなどの「選択透過性」を持ちます。

細胞膜を作っているのはタンパク質や脂肪ですが、特に脂肪が重要でその多くはリン脂質が締めています。リン脂質はグリセロール-3リン酸を骨格とし、3つの手のうち2つには脂肪酸が結合し疎水性をしめすのですが、もう一つの手にコリン、セリンなどが結合して親水性を示します。リン脂質の種類には、コリンが結合したホスファチジルコリン(レシチン)、セリンが結合したホスファチジルセリン、エタノールアミンが結合したホスファチジルエタノールアミンなどがありますが、疎水性を内側、親水性を外側とした2重膜が形成され、先の選択透過性が維持されています。そして、この選択透過性に異常が起こったり、伸縮性や柔軟性が減少すると代謝が正しく行われません。さらにこの細胞膜から体を調節する物質が多数作られ、これが正しく作られていないことが、アレルギーなど様々な疾病を生み出しています。実際、最近の統計によると,日本人の3人に1人は何らかのアレルギーを持っているということです。

しかし、従来はこういった脂肪酸のバランスではなく、脂肪では高コレステロールの方に問題があると考えられてきたために、植物油やマーガリンの使用が厚生省の指導によって推奨されてきました。ところが逆にこれが大きな問題を生み出してしまいました。それはコレステロールが思ったほどに悪影響を及ぼさないとわかってきた反面、植物油自体に問題があって、実はアレルギーを引き起こす大きな要因だったのです。特に脂肪はタンパク質や糖質などと違って、食べたものがそのままで利用されることから影響や性質がダイレクトに反映されてしまいました。

アレルギーと脂肪酸

アレルギーと深く関与するのは、脂肪酸から作られるプロスタグランディンという生理活性物質のバランスです。プロスタグランディンには様々な働きがあり、血管や気管支を拡張したり収縮したり、血管の透過性を高めたり低めたり、血小板の凝集を行ったり抑制したりと多岐にわたっています。このプロスタグランディンの研究によって、1982年ベルイストローム、サミュエルソン、ベインの3人の研究者がノーベル賞を受賞しました。

プロスタグランディンはいくつもの種類があり、それぞれの働きによって体のバランスを調整しているために局所ホルモンと呼ばれることもありますが、その材料は細胞膜から必要に応じて脂肪酸が切り出されています。脂肪酸からの各種プロスタグランディンへと展開されていく様子を「アラキドン酸カスケード」「EPA(エイコサペンタエン酸)カスケード」と呼びます。

アラキドン酸カスケードではオメガ6系のアラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ酵素の働きでプロスタグランディン2(PGE2)を合成しますが、それ自体は動物性脂肪や様々な食材に含まれるほか、体内では植物油に多いリノール酸から作られます。

またEPAカスケードでは、オメガ3系のEPAがやはりシクロオキシナーゼでプロスタグランディン(PGE3)へと合成され、そのEPAは青い背の魚に多く含まれるほか、体内では亜麻仁油などに多いα―リノレン酸を原料にして作られます。

PGE2とPGE3は作用的には似たものですが、PGE2は強すぎてアレルギーを起こしやすく、PGE3は働きが弱く緩やかなのでアレルギーを起こさないのが特徴です。従ってPGE2の働きを抑えるにはPGE3をより多く合成することが重要となります。

哺乳動物ではオメガ3系とオメガ6系の転換ができず、しかも、この2つのPGEが作られるカスケードは共通の酵素を使って反応が進んでいきますので、一方の脂肪酸を多く摂ると、他方の脂肪酸の合成を阻害することになり、細胞膜での脂肪酸バランスがとても重要になってくるのです。

しかし、現代人の食生活からはアラキドン酸やその原料であるリノール酸を大量摂取されている反面、EPAやα―リノレン酸はとれなくなってしまいました。しかも、その比率は今や10対1とも100対1とも言われますが、理想的には1対1、最低でも4対1ぐらいにはすべきであると考えられています。

EPAの原料、α―リノレン酸を多く含む亜麻仁油

アレルギーがとても多くなった現代に注目を浴びている油があります。それは亜麻仁油(フラックスオイル)です。

亜麻仁油は亜麻の種子からとれるオイルで、亜麻は、エジプトでは7千年も前から栽培され、最も古い栽培植物とされています。8世紀後半にはゲルマン民族を統一してフランク王国を打ち立てたカール大帝が健康維持のためにもっと亜麻仁油を使えという布告を出したといわれています。もともと亜麻はオイルよりも茎が用いられ、その繊維からとった亜麻布が古代エジプトで“WovenMoonlight(月光で織られた生地)”と呼ばれた「リネン」です。リネンはエジプトのミイラを巻く布にも使われていますので、その歴史は相当なものです。そこからヨーロッパへと広がり、リネン市場とともに亜麻の種は世界的に広がっていきました。

また亜麻仁油はペンキやニスの原料としても用いられ、亜麻はそちらの方向でも重要な作物でした。しかし、このように生活に大きく密着したこの植物が最近特に注目されているのはその健康面での効果です。

亜麻仁油の健康面での利点の第一はα―リノレン酸の豊富さにあります。亜麻仁油でのオメガ3/オメガ6比は約3:1、これがコーンオイルだと1:58、大豆油1:7、キャノーラ(菜種)油で1:2と亜麻仁油が圧倒的にオメガ3系脂肪酸の優れた供給源であることが分かります。なおこの比率はカナダや北欧といった気温が低い地域のものの方がよい傾向にありますので、そういった地域のオーガニックで低温圧搾(コールドプレス)されたものを選ばれるのがよいでしょう。

通常、α―リノレン酸がEPAに変換されるのはその15%でさらにDHAにまででは5%ぐらいとなります。しかし、食事中にリノール酸が多いと最大40%も効率が落ちてしまいます。従って、亜麻油を摂る際には、積極的にリノール酸を減らすような食事改善がなされねばなりません。

さらに特筆すべきことに亜麻仁油1g中には5mgのカルシウム、6mgのマグネシウム、13mgのカリウムが含まれており、たとえばカレースプーン1杯で8gの亜麻仁油がとれるとすれば、それぞれは40mg、48mg、104mgも含まれることになり、ミネラル供給源としても優れています。この他に種々のビタミンなども含まれますので、α―リノレン酸の持つ効果との相乗効果が期待できます。

従来貯蓄型エネルギーとしてしか考えられなかった脂肪は、体の中で様々な働きをすることが分かり、それが栄養素や情報が行き来する細胞膜を支配することが分かってきました。そして細胞膜の不具合はいろいろな疾病を生み出し、不定愁訴を作り出すことも明らかになっています。実際のところ、現代社会はこのことに十分配慮しておらず、改善していくことは現代人にとって必ずしも容易ではありません。しかし、これを変えない限り、人のもつ優れた機能がうまく働かず、よい生活を送ることができないことは決定的なのです。