HOME >> 安寿の知恵 >> 栄養不足からみた肩こり

筋肉や骨格の機能異常による肩こりについては、優秀なカイロプラクティックの先生にみていただくと、もとの原因から解消されることは多いでしょう。しかし栄養学的な問題に起因する肩こりについては、そううまくはいかないものです。適切なカイロプラクティックの先生による治療あるいは、患者さん側の姿勢の管理、そして栄養の方にも目を向ければ、きっと辛い肩こりも解消されることでしょう。

こんな症状があったら要注意 『肩凝り』

国民病癸

わが国で肩凝りを訴える人は小学生でも見られるほど非常に多く、国民病癸韻箸い┐泙后「肩もみ」「肩たたき」が外国の日常生活で見られることはほとんどまれです。

「肩こり」は病名ではなく、肩と首筋、背中の上部など肩周辺にこわばりがあり、「こる」「はる」「だるい」「痛い」「重い」などの感覚が生じている状態です。

 症状の程度も、軽いこりから「五十肩」といわれる強い痛みと炎症を生じるものまで差があります。しかし、時として肩こりが心臓病のような大きな病気を示唆していることがあります。

普通の肩こり
肩こりは筋肉の緊張の悪循環

前号の腰痛と同様に肩こりは一種の文明病で、人間が座って細かい手の作業をし始めてから起こってきた症状ではないかといわれています。

人間は大脳が発達した結果、頭に3〜4圓僚鼎気あります。勉強、読書、デスクワークなどの作業はいずれも前かがみの姿勢で行われており、首や肩の筋肉を緊張状態にさせます。

筋肉が長時間収縮すると筋肉内を流れる血液の量が減って酸素不足の状態になります。この状態が続くと筋肉中に疲労物質の乳酸が蓄積されていき、その結果、筋肉にこわばりが生じて、痛みやだるさが感じられるようになります。

肩こりは筋肉の緊張をきっかけにして起こりますが、その緊張によって作られる乳酸が刺激物質になり、さらに筋肉が収縮するという悪循環をたどって、症状は重くなっていくのです。

ビタミンB1の不足と肩こり

医薬品のビタミンB群製剤には「疲労・肩こりなどの症状の緩和に」などの効能がうたわれています。その理由は、ビタミンB1には細胞内でブドウ糖をエネルギーに変える働きがあり、B1不足により乳酸が蓄積して体中の筋肉がだるくなるなど、疲労の状態が引き起こされるからなのです。

歴史上で、玄米を精製した白米を食べて脚気が増えたというのは有名な話です。脚気は慢性疲労から始まり、下痢や神経の異常、麻痺、浮腫などが生じ、ひどくなると心不全から死に至ることもあります。B1不足が日本人に肩こりが多い理由の一つではないでしょうか。

白米、白小麦粉、砂糖は炭水化物が豊富ですが、それを代謝するビタミン・ミネラルを含んでいないため「精製炭水化物」とか「空のカロリー」といいます。近年では脚気になることは稀ですが、清涼飲料の飲みすぎでB1欠乏になる青少年が増えています。

 大人も過食、アルコールの多飲、カフェインの摂り過ぎなどの要因によって、B1欠乏を招きます。怒りっぽい、いらいら、集中力低下がB1欠乏初期のサインです。

マグネシウムと筋肉の緊張

食物を白くすることによって、B1だけでなくその他のビタミンB群、またマグネシウム、マンガンなども失われます。

こりの原因になる刺激を起こす筋肉中の酸化物質は、動物性食品や食品添加物から体に取り入れられます。この時にカルシウムが少ないと酸性物質を中和することができず、筋肉の疲労から肩こりが生じ始めていきます。

血液中のカルシウム濃度が低下すると、その不足を補おうとするため骨に含まれるカルシウムが溶け出されていきます。その量が多いと組織中にカルシウムが増えすぎて、筋肉が硬く、緊張した状態になっていきます。

この状態を改善するには、マグネシウムを十分に摂ることが必要です。マグネシウムを細胞内ミネラルといい、カルシウムが組織に沈着してくるのを防ぐ働きがあります。

またマグネシウムは、細胞中でブドウ糖や脂肪がエネルギーに変換される仕組みに欠かすことができません。マグネシウム不足により、だるさと疲労感が増していきます。

慢性的なマグネシウム欠乏が続くと動脈硬化が進行し、最終的には心筋梗塞など心臓病の引き金となります。ただの肩こりと考えず、症状が軽いうちに栄養素欠乏に対処することが事態の悪化を防ぐ最善の方法です。

◇ビタミンE、脂肪と血液循環

肩こりのほとんどの人、特に冷えが見られる場合、血液循環が悪いことが関係しています。

血液の循環不良は、血液中の酸素不足に関係して起こります。酸素を運ぶ働きのある赤血球の機能が低下したときに、血液の流れが悪くなります。

赤血球は細胞の一つで、赤血球の働きの良しあしは細胞膜の成分になる脂肪の性質に関係しています。動物に多い飽和脂肪酸を多くとっていると細胞膜が重くなり、柔軟性が失われます。

不飽和脂肪酸は細胞膜を軟らかくし、赤血球の運動機能を高めます。青魚に含まれるエイコサペンタエン酸(オメガ3系脂肪)を十分にとっていると、赤血球の流れが速くなり、心臓病の予防になることが確かめられています。

ビタミンEは細胞膜の酸化を防ぐために重要で、ビタミンEはホルモンバランスを調節します。更年期や月経不順のある女性の肩こり、冷え性には、E不足が関係している可能性があります。

食事の注意

・酢とクエン酸 梅干しや酢(米酢、リンゴ酢)、レモンを食べて、クエン酸を摂る。クエン酸には乳酸を処理して、疲労を防ぐ働きがある。

・砂糖の制限 砂糖を多くとっていると、乳酸が増える。

・精製した殻類の制限白米、うどん、白小麦粉食品、小麦粉の比率の高いそばを減らす。

・未精製の穀類 胚芽米、全流小麦粉パン、麦、雑穀などでビタミンB1とマグネシウム、マンガンを補給する。

・脂肪 牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品など飽和脂肪酸が多く含まれた食品を避け、オリーブ油、亜麻仁油、青魚(鮭、いわし、さんま、さばなど)から良質の不飽和脂肪酸を摂る。

・食品添加物 ミネラルのバランスを崩すので、加工食品を制限する。

・食物繊維と乳酸菌 十分な量の野菜と穀物、大豆製品を食べる。便秘の人に肩こりが多い。乳酸菌は乳酸を餌として分解する。

・ナス科の野菜 肩こりと冷え性がある人は、トマト、ナス、じゃがいも、ししとう、ピーマンなど、ナス科の野菜を食べ過ぎないようにする。

◇ 運動と生活

・冬の厚着も肩こりの原因の一つ。

・デスクワークなどでは、一部の筋肉だけが緊張している状態にある。肩関節の柔軟性を保つ運動が勧められる。

・壁に向かって立ち、ひじを曲げて両方の手のひらを壁に当て、少しずつ両腕を広げていく。

・ダンベルなどを持って手を下にし、振り子のように動かす。

・VDT作業などデスクワークを長時間続けず、一時間か30分おきに腕を回したり、伸ばしたりする。あるいは首を回す運動をする。

・肩の関節を冷やすことを避け、温めて血液循環を良くする。シャワー、びわ温灸などがよい。風呂に備長炭を入れると遠赤外線効果で温まる。夏はクーラーの風を避け、長袖を着用する。

(2)病気としての肩こり

症状に肩こりがある病気

・循環器系  狭心症、高血圧  ・消化器系  胆石、便秘、下痢

・眼疾患   眼精疲労  ・精神科   分裂症、神経症

・内分泌  自律神経失調症

甲状腺機能低下症

運動、静養などの処置をとっても肩こりが治まらない場合、内臓の病気が進行している可能性があります。

また頚椎症や頚椎椎間板ヘルニアなど、肩周囲の筋肉組織に損傷が起こっているときに肩こりが生じます。

頸肩腕症候群は、首や肩、上肢、手指の痛みやしびれを総称したもので、三、四十代でVDT作業や精神的緊張が高い仕事に携わる人に多い現代病と言うことができます。

◇ なで肩の女性に多い「胸郭出口症候群」

肩こりには老若男女が悩まされていますが、特に三、四十代のなで肩の女性に肩こりを訴える人が多いと言われています。

なで肩で首の細い女性は筋肉の発達が十分でなく、首や肩の筋肉が頭や腕の重みで引っ張られ、筋肉に緊張が起こりやすい状態になるのが、その理由の根拠になっています。

なで肩の人に多い肩こりの原因に胸郭出口症候群があります。胸郭出口は、鎖骨と一番上の肋骨の間のすき間のことで、心臓や肺を囲んでいる骨格の胸郭から心臓の血管が腕のほうに出て行くところです。

この部位が狭くなって起きる病気を胸郭出口症候群といい、腕の動脈,神経が圧迫されるため、腕や首、肩の痛みやしびれが引き起こされます。また寝ているときの姿勢が辛くて何回も寝返りをうち、睡眠中にもこりが進行していきます。

胸郭出口症候群はうつ伏せで寝るのが楽な人に多く、なで肩の女性以外では美容師、教師、塗装業、電気工事業など腕を上げたままの姿勢をとる人に見られます。

胸郭出口症候群の改善には、枕の調整によって正しい姿勢で寝られるようにしたり、1〜2Kgのダンベルを使った運動、げんこつを作って押し合ったり、右手と左手を交互に前に出す体操療法がいいと言われています。

また筋肉を柔らかくするマグネシウムや、筋肉の材料になるタンパク質の摂取、過敏な神経の状態を改善するビタミンB群の摂取が勧められます。

◇ 五十肩とマンガン

肩に強烈な負荷がかかり、腕が持ち上がらなくなった状態を四十肩、あるいは五十肩といいます。五十肩の発症年齢は平均して56歳ですが、三十代でも起こることがあります。

五十肩を正確には肩関節周囲炎といい、肩関節の周囲の筋肉や繊維質の腱などが消耗によって傷つき、筋肉や腱の運動を滑らかにする滑液包が破れたときに組織に炎症と痛みが生じるようになります。

この状態では、着服や整髪、電車の吊革をつかむなど、腕を上げる動作のほとんどが困難になります。通常は時間とともに痛みが治まってきますが、痛みが起こらない範囲で腕を運動させるなど適切な運動を行わなければ、けいれんや循環障害が起こり、筋肉の萎縮、あるいは癒着が進行して、肩凍結に悪化していきます。

肩関節の柔軟さを保つためには、ムコ多糖類という潤滑をよくする組織の形成が欠かせません。それにはマンガンが必要で、マンガンが多く含まれるわかめやたけのこ、雑穀、豆類、緑黄色野菜を十分に食べることが勧められます。

肩こり改善のポイント

・筋肉の緊張を緩和   →マグネシウム  ・乳酸の発生を抑制   →ビタミンB1

・血液循環を良くする  →ビタミンE   ・組織を柔軟にする   →マンガン

            →患部を温める

・運動不足と姿勢の改善          ・ストレスを意識的に減らす

・食生活の改善