HOME >> 安寿の知恵 >> リノール酸の問題点

リノール酸の問題点

◇酸化した油で炒めると発ガン性になる

脂肪の基本的な働きは、筋肉細胞が働くためのエネルギー源です。脂肪1gは、炭水化物やタンパク質(いずれも約4キロカロリー)の二倍強になる9キロカロリーを供給します。

また脂肪は、ビタミンA、D、E、Kなど脂溶性ビタミンを吸収し、利用するために必要です。ベータカロチンが豊富なにんじんやほうれん草など緑黄色野菜は生で食べるよりも、油で炒めたほうが吸収されやすいということを誰もが知っています。

しかし、それも油が悪くないものであるという但し書きがつきます。

油が酸化されると過酸化脂質になります。過酸化脂質は細胞のサビであり、フリーラジカルとなることで細胞膜を脆い状態にし、その細胞が老化し、発がんに向かうスピードを早くします。

市販の「透明の」サラダ油は、加工の段階でビタミンEが失われています。もともと酸化しやすい多価不飽和脂肪酸は、天然の状態ではビタミンEとセットになることで酸化が防がれています。それが商品にされるときには「ビタミンE抜きの」油だけが取り出され、瓶か缶、プラスチックの容器に詰められます。

透明の容器か瓶につめられて陳列される段階で、油は紫外線によって酸化されます。それが、加熱されると、油はさらに酸化されます。野菜にベータカロチンが豊富だったとしても、酸化した油を調理に使うことで野菜に含まれるベータカロチンの抗酸化栄養素としての働きが相殺されてしまいます。そして、その食品の発がん率を調べる変異原性のテストでは、油いためした野菜はプラスに働く陽性を示してしまうのです。

炒め物には高温でも酸化しない「エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル」がベストですが、透明なサラダ油を使うのであれば、酸化しにくいバターを使った方がましであるといえるのです。

◇局所ホルモンの研究とノーベル賞

体脂肪をやたらと嫌う人がいますが、脂肪は体の構成成分として必要です。皮下脂肪は熱を保持して、体が寒さに耐えられるようにし、腎臓、心臓、肝臓などの器官や組織を保護する働きがあります。また細胞は一つ一つ、脂肪を主な材料とした細胞膜でおおわれています。

プロ野球のイチロー選手の体脂肪率は10%を切るそうですが、筋肉を増やしたことで相対的に体脂肪率が少なくなっているので問題がないのです。女性が食事を減らすことだけで体脂肪率を18%以下にすると、エストロゲンなどの女性ホルモンが作られず、無月経などのトラブルを生むことになります。

脂肪は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のいずれも、エネルギー源、または体の組織の材料としての働きがあります。さらに多価不飽和脂肪酸であるオメガ6系とオメガ3系の二つの不飽和脂肪酸には、ホルモンのような調整物質としての働きがあります。

多価不飽和脂肪酸から作られる生体調節物質は、プロスタグランディン、エイコサノイド、ロイコトリエンなどさまざまな呼び方がされますが、ここではそれらをまとめて「局所ホルモン」と統一することにします。アドレナリンは副腎から、チロキシンは甲状腺からと、ホルモンが特有の器官から分泌されるのに対し、局所ホルモンは細胞個々で作られ、必要に応じて分泌されます。

局所ホルモンは、1930年に米・コロンビア大学で行われていた人工授精の実験を糸口にして発見されました。子宮内に精子を注入してしばらくすると逆流する場合があり、精液中に子宮を収縮させる物質が存在していることが分かりました。その後、その物質は前立腺(Prostata)から発見されたことからプロスタグランディンと名付けられ、多価不飽和脂肪酸から作られていることが確かめられました。

さらに1970年代に入り、血栓を作ったり、気管支喘息を引き起こす物質も多価不飽和脂肪酸から作られる局所ホルモンであることがわかり、その研究に功績があったベルクストロム、サムエルソン、ヴェーヌら三人の学者は、1982年にノーベル賞を受けることになったのです。

◇オメガ6の過剰摂取を促す植物油

多価不飽和脂肪酸は食物から摂取された後、ビタミンB6や亜鉛の作用によって分子構造が変化して局所ホルモンに換されます。

局所ホルモンの材料は、食事からとられる不飽和脂肪酸です。同じ脂肪でも肉類や乳製品に含まれる飽和脂肪酸とオリーブ油に多い単価不飽和脂肪酸は化学変化を受けないので、局所ホルモンに変換されません。

局所ホルモンは細胞個々に存在していて、血栓を作ったり、それを溶かしたり、また体熱を上げたり、炎症を小さくするなどの作用を行います。その他、子宮の収縮と弛緩、発汗と毛穴をふさいで、汗を止める反応など局所ホルモンの調整は広範囲に及びます。

オメガ3はオメガ6から作られた局所ホルモンの働きを抑制する作用を行うことにより、生体系の環境を調節しています。それらの脂肪酸が、食事から同量くらいの割合で摂られることが望ましく、どちらかを摂りすぎることで局所ホルモンのバランスが崩れて、健康状態に影響を及ぼすことになります。

局所ホルモンは初期の研究で精子から発見され、子宮の運動を調節することがわかりました。子宮の収縮運動が促されることで、子宮は精子を受け止め、受胎することが可能になるのですが、収縮が強くなりすぎることで月経痛がひどくなっていきます。そのため、月経痛の処方に、抗プロスタグラディン剤が使われます。しかし、薬でホルモンを増やしたり、抑制することには問題が伴います。リューマチ性関節炎の治療に、炎症を促進する局所ホルモンの産生を抑制する薬が処方される事がありますが、その局所ホルモンは胃酸の分泌を抑制する働きも兼ねているため、その薬を処方される患者には、胃潰瘍の副作用が現れてしまうのです。

局所ホルモンのバランスを乱している大きな原因は、現代の食生活での脂肪のとり方にあります。現代の食生活ではオメガ3が仮に1とられるとして、オメガ6はその10〜40倍の割合でとられているのです。

それを証明するのが、表の「植物油の脂肪酸組成」です。日常的によく使われている紅花(サフラワー)油、ひまわり(サンフラワー)油、コーン油などリノール酸の占める割合が高い油に集中しているのではないでしょうか。

◇心臓病とリノール酸過多

飽和脂肪酸がコレステロール値を高くし、心臓病の原因になる動脈硬化を促進されていることに疑いがありません。そのコレステロールを植物油に含まれるリノール酸が減らすので、植物油が心臓病を予防するということが長い間信じられていました。またバターの代わりに、植物油を材料にしたマーガリンが勧められもしました。

フィンランドで、リノール酸が心疾患の予防に働くかということを調査する大規模な実験が行われました。コレステロール、飽和脂肪、砂糖、アルコールなどを減らし、リノール酸を多く摂るように、指導されたグループと、何もしなかったグループを対照にしたものでした。

そして、実験開始後から5年後に報告された結果は、それまでの常説を覆すものでした。食事指導を行われたグループは、何もしなかったグループの2.4倍も心疾患による死亡率が高くなっていたのです。

コレステロールを減らすなど栄養改善の努力をしたのに、かえって心疾患による死亡率が高くなってしまった理由は、リノール酸を摂り過ぎていたことにありました。

リノール酸がコレステロールを下げる作用は一時的であり、また悪玉コレステロール(LDL)だけではなく、善玉コレステロール(HDL)も減らしてしまいます。その結果、数年後には血中のコレステロールが逆に高くなってしまうのです。

またリノール酸はアラキドン酸に変換された後、強力な血小板凝集作用のあるトロンボキサンA2に変換されます。その化学反応は止血のために必要であるものの、リノール酸が過剰に摂られることで心臓病の引き金になる血栓が作られていきます。それに対してオメガ3脂肪酸は、トロンボキサンA2が増えすぎようとするとき、その生成を抑制します。血栓の生成を防ぎ、また赤血球の膜を流れやすい柔軟なものにするという二つの作用によって血液の流れをよくし、心疾患を予防する働きをします。

◇アレルギーとガンもリノール酸過多で増える

アトピー性皮膚炎、アレルギー喘息、花粉症が悪化することにも、リノール酸過剰とオメガ3不足が長引き、炎症の原因物質であるロイトコリエンが過剰に作られることが関与しています。

またガンもリノール酸過剰によって、悪化します。がん細胞がリノール酸を取り込んでプロスタグランディンE2を多量に作り、免疫能力を低下させて増殖・成長していきます。

リノール酸の必要量は、穀物や豆類、ナッツなど調理に油を使わない食品からでも満たすことができるのです。それをドレッシングや炒め物、フライなどの調理に紅花油などの高リノール酸油を使うことが、心臓病、アレルギー、ガンを招きよせているかもしれません。

また、リノール酸の害を抑制するαリノレン酸などのオメガ3系の脂肪は植物油にはほとんど含まれていないため、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれる青魚を食べてバランスをとることが望ましいのですが、青魚に含まれる脂肪の量は、植物油からとられるリノール酸の害を打ち消すほど多くありません。

そこで、加熱調理にはオリーブ油、ドレッシングには亜麻仁油の二本立てで植物油をとり、高リノール酸油を排除することが、脂肪酸バランスの矯正に重要になってくるのです。まず、油のとり方を変えてみないことには、健康な食生活は実現できないといえます。

(杏林予防医学研究所 予防医学ニュースより)