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私が最初に毛髪分析を受けたのは約20年ほど前になります。レポートを見てまず驚いたのが、有害ミネラルの水銀の値が非常に高かったので驚きショックを受けました。オフィスでも沢山の方々がこれまで毛髪分析を受けられましたが、皆様当時の私と同様驚かれる方がほとんどです。しかし、私はそのようなレポート結果を見ても今では驚くことがなく、むしろ当然といった感じでいます。どうしてなのか不思議に思われるかもしれませんね。

〜 anjuu アンジュー 〜

「日本人に多い水銀」

● 最大の水銀禍、水俣病

1956年5月に熊本県水俣で公式確認された水俣病は、世界の公害病の原点であり、事態が深刻になるまでに汚染を止めることができなかった非常に不名誉なできごとであるという印象を受けます。

水俣湾に面した地域では、ネコは気が狂ったようになって海で溺れるという奇妙なことが頻発するようになりました。住民も、物が握れない、ボタンがかけられない、歩くとつまずく、目が見えにくい、耳が遠い、食物が飲み込みにくいなどの異常を訴えるようになり、さらに四肢末端や口の周囲がただれ、やがて視野が狭くなって、知覚異常、言語障害、聴力障害、歩行障害などが起こり始めました。

そして、最終的に死に至り、仮に命を取り留めたにしても深刻な後遺症を残しました。1964年に発生した新潟水俣病でも、まったく同様の症状がみられています。

水俣病で亡くなられた方の肝臓,腎臓、脳、毛髪から通常の数倍から数十倍もの水銀が検出され、この恐ろしい水俣病の原因が,水銀による汚染であることがわかりました.。

有機合成化学工業で使用された無機水銀は、その触媒反応中に毒性の強い有機水銀に変化します。有機水銀は工場排水とともに河川に放出され、藻→プランクトン→小魚→大型魚介類と、食物連鎖の過程を経て、段階的に濃縮されていきます。そして、最終捕食者である人間に、最も大きなダメージを負わせることになるのです。

1959年の熊本大学の調査では、水俣湾内の魚介類の総水銀含有量は平均11、6PPMにも上りました。わが国ではすべての魚種の規制値として総水銀含有量を0,4PPM、メチル水銀含有量を0.33PPMに設定しています。しかし、網を設置して魚の拡散を防ぎ、水銀を含んだヘドロを埋め立てるなどの努力の結果、昨年の1997年には対象七魚類の総水銀平均値を0.16PPMにまで低くすることができました。そして、水俣病の確認から実に41年ぶりに「水俣湾は昔のきれいな海を取り戻した。魚介類も安全である。」という安全宣言が発表されることになったのです。

● 無機水銀の毒性

元素として分類すると、水銀は亜鉛やカドミニウムの同族元素であり、化学的性質に類似点を示します。しかし、類似点は原子半径はやイオン半径などで、融点や還元電位などでは著しく異なる性質を持ちます。

水銀の大きな特徴は、常温で液体の金属であり、また気化しやすい揮発性元素であるということです。水銀は、液体で散らばると手のつけられないほど速く動き回るので、素早く動き回る神であるマーキュリーの名を与えられました。

その様な性質から、水銀はかなり古くからさまざまな用途で使われてきました。朱肉は、硫化水銀[HgS]という水銀の化合物です。朱肉を火傷に塗る薬に使っていたこともあり、秦の始皇帝などは直接飲んでいたともいわれています。しかし、後に触れますが、水銀と硫黄の化合物は安定しているため、強い毒性を持ちません。

近代では、歯科用材料の合金やプラスチック製品の触媒、農薬、殺虫剤、その他、水銀は数多くの工業製品の重要な成分として広い用途を持ち、1950年代には年間400トンもの水銀が利用されています。

水銀には、無機水銀と有機水銀があります。無機水銀は、蒸気などを吸ったときの呼吸器からの吸入、あるいは接触によって経皮的に吸収することがあります。歯科医や水銀鉱山の労働者などが、気化した水銀を吸入する機会が多い職業です。

「証人席の微量元素(レニハン著)」によると、アマルガムの詰め物をした患者よりも、歯科医や歯科技師への影響がより大きく、実際、当研究所で毛髪診断を受けられた歯科医さんのほとんどから、かなり高い濃度で水銀が検出されています。

また同じ歯科医でも、非喫煙者よりも喫煙者から水銀が多く検出されていることが調べられています。この理由として、指についた微量の水銀がタバコの巻紙に移り、それが完全に蒸発して、呼吸器に吸入されることが上げられています。なお検査には、外部汚染の可能性の高い頭髪ではなく、陰毛が用いられました。

◎ 水銀に接触しやすい職業
歯科技師、歯科医
晴雨計、温度計、水銀電池、ボイラー、 メーターなどの製造員
農業関係の労働者
殺虫剤や農薬に関係する業務
毛皮加工業
インキなどの塗料製造
宝石細工者
医療、化学研究所、薬品関係の従業者
蛍光灯やネオンサインの製造業

● 有機水銀による慢性的な毒性

有機水銀の毒性は無機よりもはるかに高く、わが国の水俣病や、イラクで有機水銀が付着した小麦で作ったパンを食べた6500人もの人々が中毒になった事件(459人が死亡)、アマゾンでの水銀汚染など、多くの悲劇を引き起こしています。

メチル水銀は脂溶性であり、呼吸器系、腸管、皮膚のいずれの部位からも吸収され、体内のすべての細胞に侵入することができます。そして、脳のバリヤーに侵入し、脳と中枢神経に決定的な傷害を与えます。

産業廃棄物や工場排水に水銀が含まれ、大都市周辺の工業地域では、魚や貝類が水銀の汚染を受けています。また以前使われていたフェニール水銀系農薬が土壌に浸透し、野菜や穀物、あるいは汚染された穀物を食べる動物の肉や乳製品など食物が広く汚染されている可能性があります。

毛髪分析の被検者の9割以上の人から、水銀が高値で検出されています。これは日本人特有の傾向らしく、外国で暮らしていると水銀が減るけれども、日本に帰って来るとまた水銀が増えることがあるそうです。

食物や飲料水に微量の水銀が含まれ、私たちの体に知らず知らずのうちに蓄積されています。しかしながら、水俣病のような強い中毒症状を起こす毛髪中の水銀の値は少なくとも30PPM以上です。しかしながら、10PPM以下の値で強い中毒症状が現れることはありえないものの、微量の水銀が慢性的に起こっている多くの症状に関係している疑いがあります。

水銀は、サイズ的に亜鉛に近いので、亜鉛を必要とする酵素タンパクにすっぽり結合してしまいます。すると、本来、亜鉛を必要としていた酵素の活性が妨害されます。

亜鉛含有酵素にはタンパク質代謝に関わる重要なものが多く、その活性低下により、男性の生殖能力減退や記憶力減退、免疫力低下、脱毛、皮膚の新陳代謝低下、風邪をひきやすい、傷や皮膚病の治りが遅いなど、日常的に感じられる多くの症状が現れます。

つまり強い中毒症状が起こるほどではないのだけれども、不定愁訴的な症状を起こす原因が水銀である可能性があり、水銀と拮抗する亜鉛やセレニウム、メチオニ ンなどの不足がより水銀の毒性を強めます。

(杏林予防医学研究所 予防医学ニュースより)