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タウリンについて

◇猫には必須栄養素

硫黄は、硫黄単独としてではなく、硫黄化合物として働きます。必須アミノ酸のメチオニンが人体に最も必要とされる硫黄化合物です。ビタミンB1の分子中にも硫黄が含まれます。

メタロチオネイン(有害重金属を除去する)やグルタチオン(放射線の害を軽減する)など重要な硫黄化合物は、メチオニンを材料にして作られます。メチオニンが十分にとられていれば、作られる硫黄化合物は「非必須」であるためあまり重要視されていませんでしたが、近年、タウリンという物質が積極的に取り入れなければならない栄養素として注目されています。

タウリンは、カキ、イワシ、イカ、タコなど魚介類に豊富に含まれています。

1960年代の初めにアメリカでドッグフードが普及し始め、それを与えられた猫が次々と失明していきました。後のこれは、ドッグフードにタウリンが含まれていないことが原因である事がわかりました。

人間や犬は、食事中にメチオニンが含まれていれば、それを材料にしてタウリンを合成する事ができます。しかし、ネコ科の動物は肉食に依存するためタウリンを合成する酵素の活性が低下しており、肉、あるいは魚介類から直接タウリンを摂取しなければタウリン欠乏が起こってしまうのです。

◇神経の働きに重要

タウリンは、脳に広く高濃度に分布しています。タウリンは神経細胞の終末部に高濃度に存在し、カルシウムイオンの放出に作用しています。

神経細胞は細胞外と内のカルシウムイオンの濃度差が変わることで情報が伝わっていきます。視神経では、眼が外界の映像を受け取り、情報がリレーバトンのように神経細胞を伝わっていくことで、脳に映像が映し出されます。

それらの神経の働きすべてに、カルシウムイオンが必要とされています。リン酸の摂り過ぎなど血液を酸性に傾ける状態が続く事によって、カルシウムが骨から失われ、血液中に増えていきます。細胞中のカルシウムが過剰になることで細胞の正常な機能が低下していきますが、タウリンには細胞の中にカルシウムが溜りすぎないようにコントロールする働きがあるのです。

タウリン欠乏の猫は、視神経の細胞にカルシウムが溜り、情報(光)を受け取れなくなるなど機能が低下して、失明したものと考えられます。またタウリンはノルアドレナリンなどの神経伝達物質の調整にも働いています。

てんかん患者の脳の焦点組織から、タウリンが減少していることが確かめられています。同時にタウリンの投与により、てんかんや痙攣の発作が治まることも報告されています。

◇人間にもタウリンが必要

カルシウムイオンが細胞に溜ることで、心臓病の引き金になる動脈硬化が進行していきます。タウリンはカルシウムイオンの調節により、心臓の不規則な収縮(不整脈)や高血圧を正常にする働きがあります。

またタウリンは胆汁酸の分泌を促進する事により、脂肪の分解に働きます。そのためタウリンが欠乏すると、胆嚢にコレステロールが溜って胆石になったり、体脂肪が増加して、肥満の原因になる可能性があります。

メチオニン、システィンなど含硫アミノ酸は動物性食品に豊富であり、現代の食生活では不足しにくい方です。本来なら体内で合成できるタウリンの欠乏症状が生じる理由として、次のことが挙げられます。

  • カルシウム欠乏 リン酸などによるカルシウムの細胞内蓄積で、タウリンの要求量が増えている。
  • マグネシウム欠乏 カルシウムを細胞内から除去する働きがあり、摂取不足によりタウリンの必要量が増える。
  • 亜鉛、ビタミンB6欠乏 含硫アミノ酸からタウリンを合成する。欠乏により、タウリンの合成が遅れる。
  • 重金属汚染 鉛、水銀、カドミウムの汚染により、メチオニンが消耗され、タウリン不足が起こる。
  • 神経へのストレス テクノストレス、VDTなど目へのストレスにより、タウリンが消耗される。
  • 脂肪の過剰摂取 脂肪の分解のためにタウリンが消耗される。 

これらの条件があり、硫黄の値が低いとき、タウリンを十分に補う必要があります。食物としては、汚染が心配される貝類や大型の魚類よりも、小型の回遊魚(いわし、さば、さんま)や鮭が勧められます。また現実に、タウリン欠乏の症状がある場合、サプリメントでの摂取が勧められます。

メンタルコンディショニングとタウリン

競技にもよりますが、スポーツ選手はトレーニングやゲームを通じて体力をかなり消耗します。体力の消耗といえば筋肉や内臓の疲労を思い浮かべますが、同時に精神的な疲労も伴います。瞬発力や持久力などの肉体面以上に、気力や集中力といった精神面のほうが個人のパフォーマンスを左右することが多いではないではないでしょうか。メンタルトレーニングなどあわせて精神状態を良好に保つこともコンディショニングの一環であり、ここでも栄養素が非常に重要な役割を果たしています。

「体」と「心」の関係

脳の中には数百億〜千億もいわれる膨大な数の神経細胞が網の目のように張り巡らされており、あらゆる情報の受信や発信などを行っています。全身で収集した情報は、神経細胞から四方八方に出ている突起から入力され、電気信号として神経細胞から神経細胞へと伝えられていきます。体を動かしたり内臓や筋肉の動きを調節するほか、物事を考えたり記憶するといった私たち人間の精神的な活動もすべて細胞レベルの情報伝達によっておこなわれているのです。

神経細胞と神経細胞の接続部分はシナプスと呼ばれ、情報の受け渡し場所になっていますが、シナプスにはスキマがあるため直接電気信号が伝わるわけではありません。その隙間を橋渡しするのが神経伝達物質です。トレーニングやゲームの中で高い集中力を維持するには、自律神経、つまり交換神経と副交感神経のバランスが保たれている必要がありますが、両者のバランスは神経伝達物質の種類と量により調節されています。

タウリンが集中力に関与するしくみ

この神経伝達物質には、神経を興奮させるアクセル役のものと、逆に神経の興奮を抑えるブレーキ役のものがあり、私たちの感情もこの大きく分けて2つのタイプの伝達物質によってコントロールされています。神経細胞が興奮型の伝達物質を大量に受け取るとアクセルの踏みすぎ状態になり、落ち着きがなくなったり、不安感が増強されたり、常にイライラするような状態になります。反対に抑制型の伝達物質を大量に受け取ると、ブレーキがかかりすぎて興奮が少なく、やる気がなくなったり、気分がふせぎがちになります。

よく「平常心を保つ」といいますが、平常心とは神経細胞の興奮レベルが適切な状態を意味します。すなわち、神経細胞が受け取るアクセル役の伝達物質と、ブレーキ役の伝達物質のバランスがとれた状態こそが平常心であり、同時に最も集中力が高まっている状態であるといえます。

このバランスを保つのに欠かせないのがタウリンです。タウリンは全身および脳内に広く分布しており、情報伝達全般に深く関与しています。タウリンには神経伝達物質の調整役として交感神経を抑制する働きがあるため、交感神経が過剰に働く事で生じる緊張やあせり、もしくは過剰な闘争心によるパフォーマンスの低下を防ぐことができると考えられます。タウリンは自律神経のバランスを維持する上で大変重要な物質です。

タウリンの摂取量

タウリンは、分子構造の中に硫黄を持つ含硫アミノ酸の一つです。他のアミノ酸と違って筋肉などのタンパク質を構成することなく単体で存在しています。ビタミンB6の働きにより、システインというアミノ酸から体内で合成することができますが、その量はごくわずかであるため、食事などによって外部から摂取する必要があります。

タウリンは、魚介類に比較的多く含まれ、食事での摂取量は1日に50〜250咾任△襪箸い錣譴討い泙后しかし、タウリンに薬理効果を期待するには少なくとも500咫△任れば1日3〜6gの摂取が必要であるとされます。特にタウリンの要求量が高いと思われるスポーツ選手は、サプリメントを併用するとよいでしょう。ちなみに、タウリンをサプリメントとして摂取するうえでの過剰症は特に報告されていません。水溶性の栄養素なので、余剰分は尿から排泄されるといわれています。

プロ野球のパシフィックリーグで活躍中のある選手は、1日15gのタウリンをサプリメントから摂取しています。その選手は打順が回ってくるたびにタウリンを補給して打率をキープし、パワフルなスイングでファンを魅了しています。タウリンには、即効性があるため、頻繁にとることによって体内で飽和状態を保つことができます。投手との駆け引きや球種の見極めなどに対する集中力を常に維持するだけではなく、全身の健康状態を整える上でも、この選手はタウリンを上手に利用したコンディショニングの成功例であるといえるでしょう。

(杏林予防医学研究所 予防医学ニュースより)